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北欧集成材から国産集成材へ
フォルクスAで特徴的なことは、構造材に集成材を用いたことでした。集成材の利点は、一口にいうと構造計算に乗ることです。今ではムク材も、乾燥や強度検査など木質基準が言われるようになりましたが、強度を担保する標準材の安定性という点では、集成材に利が認められます。
材の選択は、好みの問題もありますが、建物の構法・構造面からも考慮されなければなりません。フォルクスAは、金物接合による構法なので、集成材利用は必然のものでした。けれども、当時は国産集成材は、コスト・品質の両面から、まだしもの観がありました。そこで採用されたのが北欧集成材でした。
北欧集成材は、再生可能な森から生み出された材です。
北欧の森は計画伐採がなされています。この点、同じ外材であっても、山の更新費用や環境費用、社会費用などをコストに入れないで、原生林をただ奪うように運んできた熱帯雨林の輸入材とは、問題の性質が異なります。だとしても、北欧から日本に運ぶのは余りに遠く、輸送による二酸化炭素の排出問題が横たわっていました。
持続可能な家づくりを目指すOMでは、近くの山の木で家をつくる運動に賛同し、進行する山の荒廃をストップさせ、山と町を結ぶ家づくりを進めています。
いかに集成材が「標準材」としての利点が認められるとしても、また北欧材が再生可能な山だとしても、やはり“日本の山の、日本の木を用いた集成材を使った、フォルクスAを”が、私たちつくり手の願いでした。そうして9年を経て、ようやく国産集成材の採用が現実のものとなったのです。
しかし現状、集成材工場は全国に幾つもありません。日本の集成材工場は、未だ揺籃期(ようらんき)にあります。私たちは、コストを考慮しつつ、品質に厳格を期し、よりベストな工場を選択することから作業を開始しました。
工場もある程度需要がまとまることで勇気をもって製造に踏み出せます。この相互関係の中から、品質もコストも納得のいく、今回のフォルクスAの使用材が生まれました。
これからの取り組みの上で、理想をいうなら、各流域に集成材工場が設置されることです。現状、日本の集成材は主伐材が用いられています。主伐材は歳月を掛けて生長されるべき材です。集成材には、ある程度成育した間伐材を用い、主伐材はゆっくりと生育を待つべきなのに、間伐材は、山から下ろしてもお金にならないからと放置されています。これを解決すれば、日本の山は健康を取り戻せます。
今回の取り組みは、そんな展望も視野に入れての出発です。
家は家だけで成り立つものではありません。山があって、木を伐る人・運ぶ人がいて、これら、すべては連関し合って存在しています。家づくりは、意識するとしないに関わらず、この大きなデザインの中に置かれているのです。
戦後植林された「杉」は、山と町とを人が結ぶことで、社会の中に活きる。
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